⑥Shakespeare犬の 皇帝ナポレオン
第一幕
Shakespeare犬 : 将軍、あなたはブオナパルテからボナパルトへ、コルシカ人からフランス人へ、そしてその皇帝へ一挙に。
ナポレオン : 「総裁政府」と「5百人会議」は腐敗と混乱で麻痺していたのだ。民主主義は最低の合意要素に陥りやすいのだ。
第二幕
Shakespeare犬 : 将軍は人心の掌握に長けていた。
ナポレオン : 誰だって出世をすれば、敵だったものも、味方になるとしたものだ。赦せる奴は許し、罰すべきき奴は罰する、寛大さも見せた。
Shakespeare犬 : 市民は、戦争に嫌気がさし、平和を求めていた。権力亡者が君主になろうとする時、市民将軍の姿でやって来る。
ナポレオン : へたをすると、いままでの戦勝が水泡に帰するおそれもある。 あいつらときたら、いま尻尾を振っているかと思うと、とたんに噛み付いてくる奴らだ。
第三幕
Shakespeare犬 : 議会の多数工作が失敗すると、「議会親衛隊」を議会に突入させる、腕力にでた。
ナポレオン : 謀りごとが、失敗してしまった時には、無分別が大いに役に立つことがある。一人の決断によって、全体の安全と幸福とが懸っている。
Shakespeare犬 : まだこれからという若者を、いちいち迎えて、握手でもってその掌の感覚を鈍らせてはならないものを。
ナポレオン : 自分で言うのもおこがましいが、自分の値打ちくらいは自分にも分かっている、どう考えたって、このくらいの地位は当たり前だ。
第四幕
Shakespeare犬 : 皇帝ナポレオン万歳!
ナポレオン : フランス市民万歳! だが、俺の心は、なぜか晴れないのだ。玉座なんて物は、単にビロードが掛かった腰掛にすぎん。
Shakespeare犬 : わくわくするのは、追いかけてる時の事、それに比べりや、後の楽しみなんて小さいもの。人より早く成功する奴は、駄目になるのも早い。味しめた味を、生きている間にもう一度味わいたいのだ。
これまでの